Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて
高い賃料収入(純利回り)と低い借入金利の差額(スプレッド)ことが不動産を保有した際の利益の源泉
利益が増えるとキャッシュフローが減る問題
本質は、年を追うごとに金利の支払いが減ること、また、将来的には建物の減価償却が終わるため、経費が減って税金が増えること
金利の支払いは税務上の経費になるが、元本の返済は経費にならない
投資の目的は純資産を増やすこと
仮にキャッシュフローが出なくても、借入金の返済を続け、純資産(≒土地の持分)が増えれば、自由度が増すのが不動産投資の醍醐味
e.g.
物件からCFが出なくても、金融機関からの追加借入により運転資金を確保
純資産の蓄積は、多くの場合、何らかの方法で現金化することができる
賃料から得られるCFばかりにとらわれず、いかに純資産を増加させるかに着目することが重要
支払う税金の種類を知ろう
不動産投資における最大の経費は税金
収益の計算をするときは、税引前で考えてはいけない
高い税金を支払っても十分な利益が出るのであれば、税の高さに嫌気して不動産投資を避ける必要などどこにもない
個人の税金
本業のサラリーマン収入と家賃収入は合算され、最大で50%を超える税金がかかる
5年超保有して売却した場合、売却益に対する税金は20.315%で済み、法人所有に比べて安い
法人の場合
年間800万円までの利益に対して25%という相対的に低い税率
1法人あたり1物件を保有させる方法で複数の法人を作れば、その低税率が何度でも使える
社員に役員報酬を支払うことにより所得を分散して、最適な税率となるように調整できる
総じて個人保有より節税対策がしやすい
買ってから売るまでの収益率をIRRで計算する
8%のIRRが見込まれる投資案件に5年間の投資をすることは、8%複利の定期預金に5年間お金を預けた場合と最終的にはぴったり同じ利益になる
table:図0-6 IRRは定期預金と比較して直感的に理解できる
開始時 開始時 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 IRR
投資A -100 -10 50 -55 25 135 8.0%
定期預金 -100 8 8 8 8 108 8.0%
いまいちわからんmeganii.icon
IRRという共有の尺度であらゆる投資を評価することにより、どの投資案件がもっとも有利なのかを比較できる
この章のポイント
不動産投資における収益計算の基本的な考え方の理解
物件保有期間中の利益は、賃料収入と借入金利のスプレッド
キャッシュフロー以外にも「含み益」が蓄積され、その合計が正味利益となり、純資産増加となる
IRRやマルチプルを計算すれば、ほかの投資との優位性を比較できる
表面利回り = 満室想定賃料 / 物件価格
純利回り = (年間実質収入-賃貸経費) / 物件価格
年間実質収入は、空室を損失として差し引いた後の「空室控除後の賃料収入」
IRRを理解しよう
IRRとして計算された利回りは「その投資の開始から終了までの総利益は、何%の定期預金に同期間を預けたのと同じ収益であったか」
ほとんどの人はCF増価額が同じにならないのになぜ同じ利益と言えるのか不思議に感じたと思います
ええ、思ったよ。meganii.icon
正味利益の計算方法
物件価格に変動がない場合の、1年間の正味利益簡便計算法
不動産投資の1年間の正味利益 = 賃貸NOI - 金利支払い - 税金支払い
物件を保有することにより得られる正味利益は、毎年の賃貸NOIの積み上げ
物件を保有するために必要なコストは、借入金利と税金
CAPEXが経費として含まれないのは、大規模修繕費用をかけたぶんだけ建物価値(売却価格)も上がったと考えるため
不動産投資における減価償却とは、今年の税金が安くなり、その分、売却時の税金が高くなるという性質を持つ、会計上の経費
買ってから売るまでの全体で見れば、減価償却による損益は相殺され、その有無が正味利益に与える影響はほとんどない(税率が一定かつ売買価格に変動がない場合)
不動産をローンで買うことには、ローン返済を通じて土地を少しずつ自分のものにしていくという意味合いもある
銀行に借金を返せば、返した分だけ土地持分が増えると考える。土地は売れば現金化できる
返済を通じて土地持分として少しづつ積み上げてきた「含み益」も同じ
いますぐ得られるキャッシュフローに、売却時に現金化される土地の持分増加という「含み益」を足し合わせた額が保有期間中の正味利益と考えるべき
「含み益」は土地の持分という形で蓄積されていくため、将来にわたって土地価格が下落しない場所を選ぶことが重要
1-2 毎年の資産増加を数字にして確認する
不動産投資の収益計算における唯一最大ともいえる重要事項:NAV
「投資利益の蓄積(+自己資産金額)」がNAV
毎年度末にNAVの推移を確認すれば、現時点での現実的な解散価値、すなわち、投資により得られた利益総額を知ることができる
「不動産投資のゴールは、借入金を完済して毎年大きなCFが生まれる30年後であり、それまでは苦しい状況」と考える人が多いが、それは正しくない
NAVの増価額は毎年一定。それをどのような形で受け取るか(賃料CFとして、今現金を受け取るか。土地持分を将来現金化するか。)。その違いだけ
現金も土地もNAVの増加に貢献することに変わりはないのだから、売却を決めれば、借入金が残っていても「含み益」を現金化していつでも実現益に変えることができる
1-3 バブルか否かを判断するための方程式
どれだけのスプレッドがあれば「十分な利益」だと言えるのか?
現実的には、REITや個人投資家が実際に借りることができる金利とNOI利回りのスプレッドを注視する
毎年のキャッシュフロー、NAVの推移を確認して損益分岐点(ブレイクイーブン売却価格)の妥当性を検証することが重要
1-5 不動産投資の収益資料は「IRR」
「すべての投資は将来キャッシュフローの割引現在価値である」
投資とは、CFを得て資金を増やすための活動
会計上の「含み益」(未実現益)を知る必要はあるが、結局のところ「いつの時点で、いくらの現金を受け取ることができる」という「実現益」ことが投資のすべて
すべての投資は、金融商品や事業において将来発生するキャッシュフローを得るために、いまいくらまで払えるかを判断することにほかならない
e.g. 初期投資100, 5年間のCF総額140(増加40)
「5年間で総額140のCFを見込んで、いま物件を100で購入した。その利回りは年率8%であった」
「すべての投資は将来キャッシュフローの割引現在価値である」から考えると140のCFが「将来キャッシュフロー」
140以上の初期投資をかければ赤字となり、140で買えばブレイクイーブン
140のCFを将来絵的に得るために払える「現在価値」は140以下であると判断できる
CFは先に受けれ取れば、再投資して増やすことができる
早期に得られるCFには再投資する利回り分だけ、余計に価値がある
いま100もらうのと、1年後に103もらうのは同じ価値である(最低でも年率3%の利回りが確約されている市場環境の場合)
マルチプル = 投資終了時の現金残高 / 初期投資金額
この章のポイント
日本で不動産投資をする最大の理由は、金融機関からの借入により高いROEが期待できるからである
現在の借入金利であれば、自己資金比率に関わらず投資で得られる利益の総額はほとんど一定であるため、低い自己資金比率は高い利益率となる
融資を中心に据えた不動産投資は「金融システムハック」である
本来フルローンは金融機関にとって簡単に出せる融資条件ではない
貸し出す金融機関から見るリスクが高い
そのため、自己資金を出させる
2-2 自己資金比率が低ければ収益率は高い
初期投資の大小にかかわらず、5年後(n年後でも)に売却するシナリオであれば、売却まで考慮した投資全体の利益額は、ほとんど変わらない
低金利の借入による不動産投資では、自己資金額にかかわらず、物件購入後に得られる利益の総額はほとんど同じ
図2-1 5年で売却 自己資金1,000万円投入時=> 1,283万。自己資金3,000万円の場合3倍になるかと思いきや、1,381万(+7.6%)と1割も変わらない
自己資金をたくさん投入しても、利益の総額がほぼ一定ということは、投入した自己資金は収益向上にほとんど貢献していない
金利水準が変われば投資法は変わる
「自己資金は少なく」「期間は長く」「金利は低く」という前提だったが、金利が上昇した場合は何が変わるのか
金利上昇により賃料と借入金利のスプレッドが非常に小さくなれば、不動産は保有しているだけでは利益を生まない投資対象となってしまう
毎年2%程度のインフレ率が常識となれば、キャップレート(利回り目線)は変わらなくても、賃料上昇による収益還元で物件価格が継続的に上昇する
自分から自分に売却してキャッシュフロー改善
自分から配偶者、あるいは自分が持つ法人から別の新設法人への売買であれば、新規融資が認められる場合もある
通常5〜10年後には(税務上の土地建物簿価 > 借入残高)となっているはずなので、土地建物簿価で身内に売却すればその差額が戻ってくるようなローン組み換えもある